2017.5.27 シベリア少女鉄道「たとえば君がそれを愛と呼べば、僕はまたひとつ罪を犯す。」

 1ヶ月くらい前に見た演劇だけど、記録に残したいぐらい面白かったので一番最初の記事として。

 

 高校生の頃から行きたいと思って、受験勉強のモチベーションにしていた劇団。劇団の概要は以下のとおり。

 

緻密な劇構造を無駄遣いしてくだらない笑いにしか昇華させないふざけた作風で後ろ 指さされる無邪気な大人達の集会所。

シベリア少女鉄道公式HPより)

 

 ここの主宰者は土屋亮一氏。NHKのコント番組のLIFEとかテレ東のウレロシリーズとかに参加してる演出家さん。そういうこと関係なしに、ツイッターでフォローしてる人が公演の度に絶賛してて、検索しても褒めてるブログばっかりで、でも映像化されてないから生で見にいくしかなくて歯がゆかったけど、ついに見に行けた!もう上京してきて一番良かったって思った瞬間だった!

 

 シベ少は、昔はまた違うようなスタイルもあったみたいだけど、前半にたくさんの伏線を張って後半にそれを回収してどんでん返しさせるってのが最近の手口らしくて、気が狂ったかのように笑いをとっていくコメディをする劇団。小ネタであはは、みたいなのじゃなく、堂々と正面突破してくる感じ。もう28回目の本公演でハードルも上がり切ってるだろうに、それをしっかり飛び越えていく。もう土屋さんもだけど、演じてる人も半端じゃないなと思いました今回の作品は。

 

f:id:okko1101:20170701161203j:plain

 

 今回の作品も最近の手口と同じようなスタイル。赤坂レッドシアターで上演されてました。いい小劇場。

 前半はつまらなくても我慢して観る(というかそこに伏線あるから超重要なんだけどね)。なんか前半も少しだけ小さい笑いどころあったから、「もしかしてこれがネットで書かれてる面白ポイントなのかなー、じゃあ全然面白くないなー」って初めての観劇だったので思ってました。でもこんなの杞憂にすぎなかった。こんな心配したのがアホなほど、後半では怒涛の盛り返しでした。途中でくるカタルシスが半端じゃない。本当に手叩いて笑った。

 

 

  チラシのコピーは「ただ、きっかけを待っている」。

  

 ①ワン切りと非通知で着信が来る。それが婚約者のいる美奈子が、かつて致し方ない理由で別れた元彼の雄一と会う合図、というところから始まる。不倫。その合図を発見し次第、約束の海辺に走る美奈子。二人は出会う。美奈子を諦められない雄一は、意を決してプロポーズをする。婚約者がいるが雄一との別れに納得していない美奈子は、困惑しながらその場を立ち去る。

 

②そんな中、美奈子の姉の可奈恵は病気で入院していた。その治療の成功率を高めるには他の病院に行く必要があるが、かなりの費用がかかる。高額な費用を心配した美奈子のことを、妹の優奈は「お金の問題じゃないでしょ!」と憤慨し、頬を叩いた。

 

③その後、少し状態が回復した可奈恵は優奈とともに院内を散歩しようと歩き出す。しかし突然、可奈恵の体調が悪化し倒れ込んでしまう。優奈は「先生!先生!」と医者を呼び、そこに医者の先生が到着し、担架に乗せて緊急治療室に乗せて行ってしまった。

 

 

 

…と。本当にごく一部かつ前半の内容がこんな感じ。一見普通、いやむしろ平凡すぎる。しかし、上に書いたことが全てフリになって活きてくる。軸になるのは「きっかけ」。①〜③の全てが、ある「きっかけ」によって構成されている。

①では、『ワン切りと非通知の電話がきっかけで、美奈子は海辺に行く』。

②では、『美奈子がお金のことを切り出したことがきっかけで、優奈はビンタをする』。

③では、『可奈恵が倒れて美奈子が「先生!」と呼ぶことがきっかけで、先生が可奈恵を緊急治療室に連れていく』。

 

 「位置についてヨーイドンと言ったら、スタートしてください。」というのがある。これはヨーイドンでいつもスタートする(ヨーイドンがスタートのきっかけになっている)からこそ、ひっかけとして成立する。文章として全文見せられたら間違えるわけがないと思うが、実際は気持ちがはやっているため、断片的な情報で判断してひっかけられる。

 

 この演劇では役者はある種、操り人形のようなものになっている。前半では、きちんとそのきっかけ通り動けている。正しく操られている。しかし後半に向かうにつれて、人形たちはきっかけ通りに正しく動けなくなっていく。①〜③のきっかけは以下のようにして崩れていく。

 

①では、誰の電話がなっても、たとえそれがワン切りや非通知でなくても美奈子は海辺に向かって走り出してしまう。当然そこには誰もいない。

②では、誰であっても『金』というフレーズを放った人を優奈がビンタしてしまう。

③では、誰が倒れても先生が呼ばれ、その人がたとえ元気であっても先生はその人を緊急治療室に連れて行ってしまう。

 

 こうして、あらゆる状況できっかけが間違えられていく。ここに書かれてることなんてほんの本当の一部に過ぎず、全体ではこんなきっかけが10以上は普通にあった。そしてそのきっかけが何重にも連鎖することで、その場はカオス、地獄と化す。

 全く普通のストーリーだった前半の演劇が後半になってコントになる。10以上も張り巡らされた前半の伏線(この時点ではいたって普通の一場面)が全て後半に笑いとなっっていた。

 おそるべしシベリア少女鉄道。こういうことって思いつくことはできるのかもしれないけど、実際に実現して笑いを取るっていうのは天才の所為。全て連鎖するように作り上げるその能力に脱帽ですよ。もうこれはこれからの全ての公演に行くことが決まりました。

 

 伏線回収の最終形を見たような気がする。でもこれをまたシベ少はゆうに上回ってくるのだろう。このブログじゃシベ少の良さ、凄さが完璧に伝えられないの歯がゆい…。実際見ないとわからないと思うよ!ここの凄さ。あと、これは見終わった後どんなものよりも感想戦したくなるから誰かと一緒に観にいくの勧める!答え合わせ的な感覚になるし。次回公演は今年の秋冬の予定。楽しみ!!

 

 

ちなみにこれはシベ少のHPにはめ込まれている動画。これもカタルシスが素晴らしい。違和感感じたところがだんだんわかっていく感じ。元ネタわかればだけど。

 

数年前にフジテレビ「POP屋」という深夜番組で放送した4分くらいの短編です。こういうことを普段2時間くらい かけてやったりしてます。おおむねこんな感じの劇をしてます。 

シベリア少女鉄道公式HPより)

 

www.youtube.com