2017.7.4 玉田企画「今が、オールタイムベスト」

 前日に行こうと決めて、ホームページ調べたら今日が千秋楽で全部のチケットが売り切れてました。当日券調べたらそこそこは入れてるみたいなので、2限終わって直行して当日券確保しました。

 こんな急に行こうと思った要因はこのつぶやき。

  この方はテレビ東京の方で、ゴッドタンとかキングちゃんとかお笑いゴリゴリの番組を作っている人。自分が毎週録画してる好きな番組を作ってる。そして忙しいはずなのにいろんな分野のカルチャーに触れてて、いつも参考にしてる。面白いもの作れる人が「これは面白い!」っていうものはきっと面白いだろうし、そういうのに飛びついていくことが必要だと思うんだよねー、この時間がたっぷりある大学生の時に。この方の著書にも書いてあったのが「若いうちは、音楽や映画、本に漫画などいろんなものに触れていることが大切だ。」ってことが一言一句一緒ではないけど書いてて、それから意識して動くようにしてる!特に上京してからは、チャンスならそこら中に転がってるわけだし。

 センスのいい人って、アウトプットももちろんだけど、凡人よりも相当なインプットをしているはず。0から1を作っていると言われる人って、実際は凡人が知らないような、インプットされていないような0.1を組み合わせて作っていると思う。藤井健太郎さんっていう「水曜日のダウンタウン」とかの演出家の人も何かのインタビューでそう言ってた。学歴があるから就活の時だけもっともらしいこと言うやつに負けたくないってすごく思ってるし。飲み会、サークルだけが学生生活のやつに負けたくないって思うよねー。(政経落ちたからかねー…!)

 あと佐久間さんは、早稲田大学商学部卒業。で福島県いわき市出身っていう東北つながりまで一緒。まあとにかく素晴らしい演出家さんです。

 

 

 てな訳で行ってきました、五反田・大崎にある「アトリエヘリコプター」へ。(毎回前置き長いから短くしていこう…。)工場を改築して小劇場にした場所らしくて、キャパは100人。シベ少の時と比べたら半分以下。舞台が回転式で3つのセットがあって、そこを演者が移動しながら行われるシステム。

 

 でそこで見たのが、玉田企画の「今が、オールタイムベスト」。

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 玉田企画って聞いたことあるなあって思ってだけど、そういえばシベ少の演劇見たときのチラシに入ってたんだった。

 ここの主宰者は、玉田真也さん。あの青年団の演出部に所属してるらしい。平田オリザさんの青年団。今度、こまばアゴラ劇場にも行きたいな。

 

 内容としては、って紹介したいんだけどなんと書けばいいか難しい。素に戻ってみると普通の会話が行われてただけなんだけど、最初の1シーンでこの演劇の方向性が見えて、そっちに観客が持っていかれて笑いが増えていく。

 ざっくりまとめると

「心が屈折した中学3年生の息子。その息子の父(社長)が今度再婚するということで、披露宴のために父と息子、父の弟、父の会社の同僚と長野のコテージに宿泊している。話は披露宴前日の出来事。再婚相手になる女性のことをお母さんとは認識しようとしない息子。その理由は『散歩用の靴をその女性に勝手に使われた』という一見些細に思えることであった。披露宴には出ない、あの女性はお母さんなんかじゃないと言う息子の横柄な態度についにしびれを切らした父が激怒する。しかし、息子が散歩用の靴を大事にしていたのにはちゃんと理由があった。それは『散歩の時間だけが彼にとって唯一の楽しい時間である』ということだった。社長である父が毎晩のように会社の人を家に連れてきて騒いでいること、知らない人を急に連れてきて一緒に暮らしていることにとても居心地の悪さを感じていたが、口には出さずに我慢していた彼にとって散歩は気を使わずに済む時間だったのだ。そのことを明かされた父は、それでも引き下がれなくなったのか、怒って息子を追い出してしまった。同僚や弟から非難を浴びる父。最後は、再婚相手の女性が息子の部屋に行き、靴を履いてしまったことを再度謝り、なんとなくこれからに向かって本当に少し歩き出す。」

って感じ。

 

 とにかく登場人物がリアルに描かれている。全ての人に感情が移入できる。例えば、デートに誘うシーンとかでモジモジしてはっきり言えない感じとか。「今度の日曜、暇なんだけど遊ばない?」って言えばいいものをその言葉が全く出てこない。頭では言えばいいのわかってるのに言えない。言ったところで、かなり婉曲的になっちゃって伝えたいことが伝えられない。もっと一緒にいたいのに「じゃあ解散にする?もうちょっとどっかいく?」って言っちゃう。自分の中では一択なのに。

 全員のすべての会話が今まで自分がしてきたような会話で構成されている。

 そしてこの劇では、ストーリーの中で最初に10代の息子が好きな人に告白できない様子が描かれる。その後、30代の会社の同僚が好きな人と別れなければいけない流れになってしまい、本当はもっと一緒にいたいのにそれがなかなか言えない様子が描かれる。最後は、ウェデイングプランナーのバツイチの40代のおじさん(プランナーがバツイチという設定が良いね)がこの歳になると好きな人ができても怖くて勇気が出ないという様子が描かれる。これが男なのだ。何歳になっても大事なところで決断できない男がそのまま歳を食っていってしまう。この描写によって、再婚する父の異質さが際立って、ラストシーンの激昂する場面にうまく繋がっていた。

 このような同じ人生を歩みそうな年齢の違う二人が描かれることが多く、演じられている「今現在」だけでない、将来も想像された。演者一人一人の発言だけではなく、発言していない時の行動にもとてもメッセージが感じられた。青年団イズムかな。

 

 そして、この作品の作・演出であり、息子役を演じた玉田真也氏の演じっぷりが半端じゃなかった。彼の精神がかなり屈折した反抗期の中学生役がかなりはまり役で、彼の右に出るものがいるのかなとも思わされた。例えば最初のシーン。ゲームをやっていて、父の弟の話に耳を傾けない息子(裕太)に対して、再婚相手の女性(恵)が優しく話しかけるシーン。

恵 「(気を遣って謝る健次に対して)全然、大丈夫大丈夫。裕太くんもゲームしたいよ、楽しいんだもんね?」

裕太「別に、楽しくはないですね。」

恵 「え?嘘?楽しそうじゃん。全然やってていいんだよ。」

裕太「だから今やってますね。」

恵 「あ、うん、そうだよね。」

裕太「はい、見れば分かりますね。」

恵 「あ、そうだよね、見れば分かるね。」

 文字で起こしても分かる、生意気なガキ感。これを本当に鼻につくように演じると同時に、いるいるーって観客に思わせて笑わせる。ふざけて話しているようには一切思わせずに、本当の会話として成立させているのがすごい。よくテレビで超頭のいい小学生とか中学生が話してるようなリアリティ。この一連の会話で観客はこれは笑うやつだと思わせる。これがとても大事なロジックだと思った。

 というのも今回の作品は、実際にあり得るような普通の話がベースになっている。何か特別に笑わせるために変な展開を用意しているとかはない。だから普通に進めば、淡々と物語が進むだけだった。最初のシーンで屈折した少年のやり取りを提示することで、この物語に対する観客の見方を提示したと思う。日常の妙を浮き彫りにして、そこを笑いに昇華している作品なんだと思って、これ以降のシーンで小さな日常的な会話でも笑いが起こるようになっていた。

 帰りの電車で、女子中学生と思われる人たちが目の前で話をしていた。いつもなら気にしないが少し話を聞いてみることにした。地獄だった。くそだ。生産性がない。馬糞だ。そう思った。でもこの地獄を楽しむんだと思い込めば、地獄であればあるほど面白くなってきた。逆説的な状況に陥っていた。こういう風にある種の見方を提示されればそう思えてくるものだ。

 戸田恵梨香が神崎直という馬鹿正直な女性を演じた「ライアーゲーム」というドラマ、映画がある。このドラマの最初は(漫画でも同じだが)、神崎が拾った一円玉を警察に届けるシーンから始まる。これで視聴者には、彼女が間抜け、馬鹿正直であるという印象が残る、刷り込まれる。そこから物語が始まる。

 ミステリー映画でもミスリードでよく使われる。前回の「22年目の告白」では、藤原竜也演じる曽根崎が犯人としか思えないような描写をすることで、そういう人なんだと思わせて裏切る。(前も言ったようにあれはミスリードが弱かったけど。)

 この効果が今回の演劇ではとても効果的だった。だから些細な日常会話でおかしな点を浮き彫りにさせて、あんなに笑いを起こすことができていた。

 

 とても面白かった!シベ少と比べたら爆発力では劣るけど、演劇という枠組みの中で普通のものから笑いを生み出していた。シベ少はあれは演劇っていうか、あるやりたいことを劇を使ってしている感じ。劇としてのストーリーの発想というか構成の発想が半端じゃないから。そこらへんはシベ少の記事見て欲しいな!そんなシベ少が今のところ一番好きだけど!

okko1101.hatenablog.com

 こっちきて最初に見たのがシベ少だったから自分の中で演劇という軸がずれていたのを今回でちゃんと戻せて、なおかつ笑わせていただきました。共感するところもたくさんあって、急だったけど見に見に行ってよかったなとすごく思えてる。あと、終演後にロビーで台本売ってたから買って少し見てみてる。

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 今回はセリフとか細かく文字起こしできたけど、いつもはなんとなく覚えてる雰囲気でやってるだけだから。

 ってな訳で、今回はついに4000字超えちゃった。本当は1000字ちょいに収めて、英語の勉強するつもりだったのに。まあ楽しかったからいいや。充実した一日。次見にいくのは7月29日のオールナイトイッポンRemixだったはず!それまでは演劇はおやすみ。ブログはことあるたびに書こう。4000文字はいらないから…。